買収先企業の資産を担保に資金を借り入れるLBO

MBOは通常、買収の対象となる企業の資産を担保にして巨額の資金を借り入れる。その資金で買収に使う。いわゆる「LBO(レバレッジド・バイアウト)」という形態だ。

MBOの実態は、投資ファンドによる「錬金術」である。なぜなら、買収資金の大半を出す投資ファンドの使命は、運用利回りを上げることだからだ。

MBOの後には必ず投資ファンドによる投下資金回収の行為が続く。それは対象企業の再上場(による株式の売り出し)か、M&A市場での一括売却かの2つに1つである。

だから、MBOは恒久的な非上場化ではない。究極の敵対的買収防衛策でもない。

日本のMBO成功例

ジャフコのトーカロTOB

2001年1月、ベンチャーキャピタル大手のジャフコが、当時店頭公開していた金属表面処理メーカー、トーカロをTOB(株式公開買い付け)で買収した。これは、日本における初期のMBO成功例だった。

外資系による買収を回避

経緯は以下の通りである。

まず、トーカロ株式の60・4%を保有していた親会社の日鉄商事が、事業見直しの一環としてトーカロを売却する方針を打ち出した。

その後、外資系企業が、独自の溶射加工技術に強みを持つトーカロに買収を打診した。オーナー経営者の中平晃社長(当時)は、外資による買収を避けたいと考えた。そこで、ジャフコに買収を依頼した。

東証2部に再上場

トーカロは約3年後の2003年12月、東京証券取引所第2部に再上場を果たした。外資からの買収に対抗するためのMBO成功の先駆けとなった。

このケースも見方を変えれば、投資ファンドによる経済合理性に基づく錬金術の一種であった。

たまたま1人の支配権株主(日鉄商事)が存在していた。その株主が検討した売却先の1つに、経営陣が好ましいと思わない外資系企業が入っていた。